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「あっち〜…。」
ダーリンが犬みたいに舌を出して、下敷きでぱたぱたと扇いでいる。
「言うな。余計暑くなる。」
メガネさんは眼鏡のレンズを拭きながら、ダーリンをぎろりと一瞥した。
「全く君達は鍛え方が足りん。『心頭滅却すれば火もまた涼し』だ。」
呆れ顔で言う終太郎。
ダーリンは、側に浮いていたテンちゃんを引っ掴むと、
「そぉれ、火を吹けーいっ!」
ゴチンッ!
テンちゃんの頭をげんこつで叩いて、終太郎に炎を浴びせた。
「うわっちーーーーっっ!!」
「どぉだ、涼しかろう?」
一瞬にして真っ黒になった終太郎と、テンちゃんを床に投げつけて
にっしっしっと笑うダーリンとのおっかけっこが始まった。

「ま〜ったく、この暑いのによくやるわね。」
少しでも涼しくしようと、しのぶはセーラー服の胸元を仰いで服の中に風を送っている。
「何かみんなイライラしてるみたいだっちゃ。」
「そりゃそ〜よ。これだけ暑いとね〜…。あーあ、教室にクーラーつけてほしいわー。」
「うちは何ともないっちゃ。」
「あんたは特別よ。」
しのぶは、額ににじむ汗をミニタオルで拭った。

ダーリンと終太郎のおっかけっこはもう終わったみたい。
2人が息を切らして戻ってきた。
「ふぃ〜。余計暑くなった。」
「貴様が阿呆なことをするからだっ!!」
「そう怒るなよ。面堂君をより涼しくしてさしあげようと思ってのことさ。」
作ったような爽やかな笑顔を向けるダーリンに、またも終太郎が怒り出した。
「おのれ、よくもぬけぬけと〜っ!!」
刀を抜いた。しかし、
「だあーっっ!!うぉだまりぃぃーーっ!!」
それを止めたのは、やっぱりメガネさん。
「余計暑くなるっちゅーとろーがっ!!」
ものすごい形相で怒鳴るので、2人は渋々争いを止めた。

「それにしてもホント、今日は暑いなぁ。」
ダーリンがどかっと椅子に座った。
両足を机の上にのせて、また下敷きで扇ぎ始める。
うちは隣の席で頬杖をついて、ダーリンを見ていた。
「ラム、お前あの氷、今日は持ってないのか?美女がいーっぱい出てくる氷…。」
「アイス・クーラー≠フコトけ?今日は持ってないっちゃ。」
「ちぇっ。あ〜、暑〜。」
だらだらーっと椅子に沈み込むダーリンに、何だか口元が緩んでしまう。
子どもみたいでかわいい≠ニか言ったら怒るっちゃね〜、きっと。
「どっかの気のきく金持ちが、教室にクーラーぐらいつけてくれんもんかねぇ〜。」
そんなことを言いながらダーリンは、下敷きで扇ぎ続けている。
しのぶと同じように、襟元からワイシャツの中に風を送る。
ダーリンはいつも制服のボタンを上から1つか2つは外している。
ダーリンだけでなく、終太郎のような優等生を除けば、ほとんどの男子生徒はそうしていると思う。
暑くなくても、全部はめているのはどうも窮屈らしい。

「はい、これあげる。」
しのぶが缶ジュースを1本、ダーリンに差し出した。
よく冷えているようで、缶の周りに水滴がついている。
「おぉ〜、さんきゅー、しのぶ〜vv」
調子にのってダーリンがしのぶに抱きつこうとするけど、しのぶはさらりと身をかわしたので
ダーリンは身体のバランスを崩して床に倒れそうになる。
「それで少しは頭を冷やしなさいよ。」
ひらひらと手をふって、しのぶは女友達のところへ行ってしまった。
ダーリンはプルトップをしぱっと開けて飲み口に口をつけた。

透明の液体が炭酸の泡を吹きながら、ダーリンの口へ流れていく。
椅子を斜めにして顔を少し上に向けて飲むダーリンの喉が、ジュースの流れに合わせて動く。
余程喉が渇いていたらしく、続けざまにごくごくと流し込むと、収まりきらなかった液体が一筋、
ダーリンの口の端から零れて顎をなぞって首筋へと伝っていった。
その様が妙に艶かしくて、うちの目は一瞬釘付けになる。

「お前も飲むか?」
突然聞こえたダーリンの声に心底驚いた。
「え…っ?!何だっちゃ、ダーリン?」
「欲しそうに人のこと見てるから気になる。欲しいならそう言え。」
「ち、違うっちゃ。うちは別にジュースが欲しい訳じゃ…。」
慌てて否定する。そんな気は全然なかったのに。

欲しいのはジュースじゃなくて。
渇いているのは喉じゃなくて。

「…ふ〜ん、ならいーけど。」
ダーリンは顔の向きを戻して、また一口ジュースを飲んだ。



窓ガラスを通して降り注ぐ夏の強い日差しが、缶ジュースの水滴に反射する。
それがきらきらとまぶしいから、目を細めて視線をずらすと、
大好きな人の首筋を伝う一筋の液体。



こんなにも喉が渇くのは、夏の暑さのせい?
こんなにも身体が気だるいのは、夏の暑さのせい?



それは、暑い夏がかけた魔法。


(終)


チラリズムとか好きなんですよ。
全裸より萌えるよね。(って誰に同意を求めてるのやら・汗)

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