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「ダーリン、大丈夫だっちゃ…?」
うちは小声で言いながら、襖をそっと開けた。



「たまにはのんびり温泉もいいわよねぇ。」
雑誌の記事を見ながらつぶやいたしのぶのその一言から始まって、
ダーリン、終太郎、しのぶ、そしてうちの4人での「しなびた温泉一泊旅行」は
あっっという間に実行に移された。
「こんな古めかしい旅館などでなくとも、我が面堂家御用達の由緒正しい宿が…」
「やだわ、面堂さん。こういうちょっと時代を感じさせる所でゆったりと温泉につかるのも
またイイものなのよー。」
「混浴か? なぁ、混浴か??」
「さっきからそれしか頭にないのけ?!」
各人それぞれが勝手なことを言いながら、今にも潰れそうな「しなびた温泉宿」に一行はやってきたのだった。



ラムはあたるの側に、音も立てずに座った。
「寝てるっちゃー…?」
大人の目がないのをいいことに、歳をごまかして宿をとった。
ダーリンと、それに付き合わされた終太郎はビールを浴びるほど飲んでダウン。
しのぶもコップ一杯で顔を真っ赤にしていた。
うちはーー…地球のアルコールはうちには緩かったっちゃ。全然平気。

ぐーぐーと大きな寝息を立てて、布団の上に大の字になって爆睡するダーリン。
ふふ、何だか本当に夫婦みたいだっちゃ。
だってダーリンの布団の隣には、もう一組の布団。
しのぶが
「男女別々の部屋に決まってるじゃない! あんたは良くても、あたしは面堂さんと同じ部屋じゃ困るわよ!」
と言ってたけど、どうせ今頃隣の部屋で、しのぶが終太郎を看ているはず。
このまま朝まで居られるかも。ラッキー。

「…んー…」
僅かに声がしたので顔を向けると、ダーリンがもぞもぞと動いていた。
「ダーリン、苦しいのけ?」
ダーリンの耳元に顔を寄せて聞く。
「…あっついー…。」
そう言うと、ダーリンは眠ったままで自分の浴衣の前を緩めようとした。
でも酔っているのと寝ているのとで、手がちゃんと動かない。
チャーンス。
「うちがやってあげるっちゃ。」

寝ているダーリンの浴衣の帯を少し緩めて、浴衣の前を少しずつはだけさせる。
いっつも無理やり抱きついたり腕を絡めたりはしているけど、
さすがにこんなことまでしたことはないからちょっとどきどきしてきた。
どうせダーリンは寝てるんだからーーーー。
そう思うとせっかくのこの機会、逃す手はない。

ダーリンの浴衣の前を更にはだけさせて、まじまじとその身体を見た。
部屋の明かりは小さくしているからあんまりはっきり見えない。
薄明かりに浮かび上がるダーリンの身体は、かえってイヤラしく思えた。
「ダーリン、起きてる…?」
念のため確認する。返事はない。

指でダーリンの唇に触れてみる。
そのまま指で形をなぞってみる。
「たまにはダーリンからキスしてほしいっちゃよ…?」
ダーリンの顔を覗き込んで呟く。

指を下の方へ移動させる。
顎をなぞり、首筋を伝っていく。
「…う……ん…」
「ダーリン、起きたー…?」
再び確認する。
本当に起きちゃったらどうしよう。怒られるかな。
怒られても好きだから平気だけど。

でも起きなかったみたい。セーフ。
よしよし、続き続き。

指先一点、ってのもどきどきして好きだけど、やっぱり物足りなくなる。
うちはふわりと浮かんでダーリンの上に移動した。
両手をダーリンの顔の両側に置く。
そのまま身を屈めて顔を近づける。
ダーリンの寝息がうちの唇にかかる。
もっと、もっと。ダーリンに触れたい。

唇を重ねた。
啄むような軽いキスを何度か繰り返す。
「…んっ…」
ダーリンが鬱陶しそうに顔を背けた。
ーー失礼だっちゃ。
無意識でもそーゆーことするなんて、全くもって失礼だっちゃよ。

横を向いてしまったダーリンの顔を両手で包み込んで正面に戻すと、
うちはさっきよりも長くキスをした。
するとダーリンはだんだん息苦しくなって、また少し顔を背けて口を開け、空気を吸おうとする。
それを邪魔してまたダーリンの口を自分の口で塞いだ。
ダーリンが口を開けたのを狙って自分の舌を割り込ませる。
もう、起きちゃってもいいっちゃ。

「…ふ…んぅ、ん…」
苦しそうに息をするダーリン。どきどきする。
ダーリンの手がいつの間にか伸びてきて、うちの肩を押す。
ヤダ。離れてあげないっちゃ。
うちの肩を押すダーリンの手はあんまり力が入らないみたい。
うちはダーリンの手を取って、きゅっと指を絡ませると、そのまま布団の上にやんわりと押さえつけた。

「ダーリン…。」
わざわざ耳元で囁くように呼ぶ。
前に偶然知ってしまった、ダーリンはコレが苦手って。
「うちのこと、好き…?」
もう一回。
今度はご丁寧に息を吹きかけ、耳朶を舌で舐めた。
「ねぇ…?」
少しだけダーリンの肩が揺れて、顔を背けられた。
「ダーリン…、答えるっちゃ。」
「…や…ッ…」
絡めたダーリンの指に僅かに力がこもる。
横を向いた顔を更に背けて、シーツに逃れようと身を捩った。



「…ぁ…?」
さっきまでと違う、ダーリンの声が聞こえた。
「…起きたのけ、ダーリン?」
残念。
うちは宙に浮いてダーリンから離れた。
「ダーリン、苦しくないっちゃ? 大丈夫?」
それまで自分がダーリンにしていたコトなどおくびにも出さずに、心配そうに聞いた。
「…ん…だいじょうぶ…。」
ダーリンの、ぼんやりした顔と声。
「お水持ってこようか?」
「うん…。」
やっぱり苦しいんじゃないかなぁ。いつものダーリンの元気さがない。
本当にぼんやりしてるっちゃ。

水道の水をコップに入れて、部屋に戻る。
ダーリンはまだ横たわっている。
「ダーリン、お水持ってきたっちゃ。飲む?」
「…うん…。」
うん、て。
普段はそんなかわいらしい返事、あんまりしないよーな気がするんだけど。
「起きれる?」
ダーリンの手を引っ張ろうとしたけど、
「…いい。自分で起きる…。」
と、断られた。
ダーリンがゆっくりと起き上がる。
「あ、…」
浴衣。
さっきうちがはだけさせたまま。
ダーリンの起き上がる動きに合わせて、かろうじて引っ掛かっていた浴衣が
ダーリンの右肩から音もなく滑り落ちる。
落ちた浴衣はダーリンの腕にしわを寄せて溜まった。
左肩にはまだ何とか浴衣は留まっていて。
いっそ全部落ちて上半身裸にでもなった方がむしろ男らしい格好かも。
だらしなく半分露になった今の状態のほうが目のやり場に困る。
嘘。全然困ってないけど。むしろ大歓迎だけど。

「お水、自分で飲めるっちゃ?」
「うん…。」
“うん”なんて素直な返事ばかり繰り返すダーリン。
調子に乗って聞いてみる。
「それとも口移しで飲ませてあげようか…?」
さぁ、何て返事するっちゃ?
「…うん…。」
ーーーーーーーーーーー!?
「え、く、口移し、して欲しいっちゃ?!」
「うん…。」
ホント?! 本当にやっちゃっていいっちゃ?
半信半疑だけど、目の前のダーリンは相変わらずぼーっとしたままで、
何だか視点が定まっていない。
…脳はまだ寝てるのかも。

コクッと一口分、水を口に含む。
ダーリンの顎に手を伸ばし、自分の方へ優しく引き寄せる。
ダーリンはうちの手の動きに大人しく従う。
その上大人しく、徐々に瞼を閉じた。
うわっ、どーしよう。ホントにいいっちゃ!?

どきどきどきどきどき。
嫌がおうにも鼓動が速くなる。
目を閉じて大人しくうちを待つダーリン。
何かもう「好きにして」状態。
後になって怒鳴られたりして。
実はちゃんと起きているのにうちを騙してるだけだったりして。
ーーーそれでもいいっちゃ!

ダーリンに口付けて、水をダーリンの口の中に流し込む。
うまくいかなくて、口の端から水が一筋零れる。
でもいくらかはちゃんと入っていったようで、ダーリンの喉が数回上下したのが分かった。

口の中が空になったので、ダーリンの口から離れた。
どきどきどき。
「ダーリン、お水、もっと欲しい?」
返事は?
「んー…も、いい…。」
あれ? “うん”じゃないっちゃ。ちぇっ。
「え、とー…じゃあもう寝るっちゃ?」
他にすることが思い浮かばない。
「うん…寝る…。」
言い終わると、ダーリンはふらぁっと布団の上に倒れた。
「わっっ!?」
気を失ったのかと思ってびっくりしてダーリンを支えようとしたら、
スースーと安らかなダーリンの寝息。
また大の字になって、爆睡を始めてしまった。

「なーんだ…。」
うちはほっとして、ぺたんと座った。
すやすやと眠るダーリンを見る。
あーあ。
うち、幸せだっちゃー。



翌朝目を覚ましたダーリンに「お水飲むけ?」と口移しで飲ませようとしたら、
「何すんじゃ、お前は!!」と思い切り掌で顔を押し返された。
あーあ。





(終)

M-Angelさんに捧げます。
萌え萌え〜な浴衣はだけダーリン絵のお礼のつもりデス〜/////
タイトルと今一合わないのですが、良いのが思いつかないのでこのまま。


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