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昨夜あいつはUFOで寝たから、今朝は少しだけ久し振りの再会になるのだけど、
それにしても「おはよう」と言ったその唇が、何だかいつもより艶やかで、
いつもより艶かしく見えたので、つい一瞬ぼーっ見とれてしまったら、
「どうしたの?」と顔を近づけて俺の目を覗き込んでくるから、
俺は異常に焦って思いっきりそっぽを向いてしまった。



キスがしたい。
キスがしたい。
キスがしたい。




「おはようございます、ラムさん。
 おや、ラムさん?今朝はいつにも増して何だかお美しいですね。」
「終太郎、おはようだっちゃ。」
ラムが俺と並んで教室に入ってくるなり、面堂の奴がラムに近寄ってきた。
朝っぱらからイヤラシイやっちゃ。
「ラムさん、もしや薄く化粧などされて…?」
「えっ?!うちお化粧なんてしてないっちゃよ?」
「そうですか?何だかぐっと魅力的に見えたので…特にその唇が…」
どすぅっ!
面堂の脳天に俺のハンマーを力一杯叩き付けた。
「朝っぱらから何言っとんじゃ、このタコッ!!」
なんちゅー目でラムを見るんだ、てめーはっ!
「…も〜ろ〜ぼ〜し〜ぃ〜…おのれーーーっ!そこへなおれーーーーーっ!!」
刀をぶんぶん振り回して追いかけてくるのを、ハンマーで威嚇しながら逃げて回る。
「もう、2人とも朝からケンカはよすっちゃ!」
ラムが声を上げるが、怒り心頭の面堂にはラムの声も届かないらしい。
俺はひょーいと跳んで面堂の背後に回ると、もう一度ハンマーで思いっきり殴って、奴の動きを止めた。


「昨日、しのぶと竜之介と一緒に、デパートに行ったっちゃ。」
「ほう。」
ラムはにこにこと話し出した。
俺は机の上に広げた漫画を目で追いながら、適当に返事をする。
適当に。
「そしたらいろんな新商品が出てたっちゃよ。」
「ふーん。」
「で、1個買ってみたっちゃ♪」
「…何を?」
「リップクリームv」


ラムが、右手の人差し指を自分の唇に添えてウィンクする。
アイドルのCMかポスターのように。
小首をかしげてにこっと微笑んでみせると、窓から差し込んでくる日の光がその唇に反射する。
瑞々しいその唇にふれてみたい衝動に駆られる。
「どう?ダーリン、似合うっちゃ?」


もちろん似合うさ最高だよとても魅力的で心を奪われたよ
ああいますぐこの手で抱きしめてそのまま口づけしたいよ



などと思っても決して言うことはできない。
代わりに出た言葉は


「何だ、朝っぱらから天ぷらでも食ってきたのかと思った。」


ピシャーーンッ!
ラムの電撃が炸裂した。



退屈な授業を6回聞き流して、一日は終了。
部活にも参加していないので、そのまま帰ることにする。
「ダーリン、一緒に帰ろv」
ラムが後ろから飛んできた。
いつもなら即行で「いやだ」と答えるところだが、
「あぁ。」
と適当な返事をして、俺はすたすたと歩き出した。
当然、ラムは後ろからついて来た。


帰り道、俺はいつもと一本違う角で曲がった。
「あれ?ダーリン、家はあっちだっちゃよ?」
ラムが不思議そうに尋ねた。
「まだ明るいから寄り道して行こうぜ。」
そう返答すると、ラムは嬉しそうに「うん!」と言った。
しばらく行くと、小さな公園が見えてきた。
遊具も少なく、あるのはベンチと手入れの行き届いていない花壇ぐらい。
当然のことながら、誰もいない。
「こんな所に公園があったなんて、うち知らなかったっちゃ。」
ラムは興味津々で俺より先に公園へ入って行く。
無邪気なもんだな。
そんなことをぼんやりと思いながら、ラムの後に続いて公園内に足を進めた。


「誰も遊んでないっちゃねー。」
ラムは緩やかな低空飛行で狭い公園内を探索している。
その様子を、俺はベンチに座って眺めていた。
涼しげな秋風に、紅葉したもみじの葉がふうわりと舞い落ちる。
ラムはそれを一枚手にとってはそっと飛ばし、また一枚手にとってはそっと飛ばす。
何が楽しいのか、小さい子のように同じことを繰り返している。


俺はすっと立ち上がり、ラムの方へ歩いて行く。
ラムはもみじの葉にすっかり夢中で、こちらを見向きもしない。
「ラム。」
「え?…きゃ…っ!」
「あ、おい…っ!」
突然背後から俺の声がして驚いたラムが、くりっと顔を向けた拍子に
さっきから自分で足元に落としていたもみじに足を滑らせ、身体のバランスを崩した。
俺は咄嗟にラムを支えようと腕を伸ばすと、ラムの身体をちょうど後ろから抱きすくめるような格好になる。


ドクン。


自分の鼓動が速くなるのが分かる。
腕の中にすっぽり収まっているラムの身体に反応して。


ヤワラカイ…。
アッタカイ…。


後ろから抱きしめているせいでラムの顔が見えない。
視線が合わない分、俺は自分の気持ちそのままの行動に出てしまった。


そのまま更に身を屈めてラムの身体を抱きすくめる。
そしてラムの耳元に口を寄せて、聞いた。
「キスしてもいいか?」


相手からの返事はない。
けれども返事なんて待ちきれなくて、腕の中のラムの肩を掴んで身体の向きを変えさせる。
俺の目はずっと、それはきっと今朝からずっとラムの唇に釘付けで、
目の前にあるはずのラムの表情がどうとか、そもそも受け入れているのか拒んでいるのかとか、
そんなことは微塵も考えなかった。
俺は吸い寄せられるように、その魅惑的な唇に口づけた。


いつの間にか日が随分傾いて、西の空は赤く染まっていた。
隣りを歩くラムを横目でちらりと見ると、顔が赤く染まっていた。
それは夕日の色なのか、それとも別の色なのか。
どちらにせよきっと、
自分も同じ顔の色をしていたに違いない。



(終)

kobabuさんに頂いた秋のゲロ甘イラストから妄想したお話。
なので、kobabuさんに捧げます。


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