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「あっちぃーーー……。」

夏休み。
旅行に行く予定もなく、女の子を誘ってデートに行く金もなく、
あたるは暇を持て余して部屋で昼寝をしていた。
しかし、クーラーも扇風機さえもない部屋の中は猛烈な暑さで、
あたるは目を覚ました。

「うへぇ、べったべた…。気持ち悪ぃ。」

額、顔、首、腕、足と体中から汗がにじみ出て、服が体にべったりとくっついている。

「あたるのあほ〜…むにゃむにゃ…。」

上半身を起こしたあたるの隣で、腹立たしい寝言を呟きながら、ジャリテンが寝息と共に小さな炎を口から漏らしている。

「くそっ! 暑苦しい真似しくさってからに…。」

あたるが背後からフライパンをスッと取り出して構えた。
そしてテンのオムツをつかもうと左手を伸ばしたとき、

「ダーリン、起きたっちゃ?」

戸を開けて、ラムが入ってきた。
ラムも一緒に昼寝をしていたはずなのに、いつの間にか起きていたようだ。
あたるの気が逸れて、テンに伸ばした左手とフライパンを引っ込めた。

「3人並んで昼寝してたうちらを見たお母様が、『親子3人川の字って感じだったわよ。』って言ってたっちゃ。
 ダーリン、どういう意味だっちゃ?」
「誰が親子じゃ! 母さんめ、おぞましいことを〜!」
義母の言葉の意味もあたるの怒りの意味も分からなくて、ラムはきょとんと小首を傾げた。

頬を少し赤くしてブツブツ言うあたるを放っておき、ラムは手に持っていたアイスのふたを開ける。
暑い夏にぴったりの、イチゴ味のカキ氷アイスだ。
冷蔵庫でしっかり冷えていて氷が硬い。
アイス用の小さな木製スプーンで少しずつ氷を砕いて、口に運ぶ。

「う〜ん、冷たくておいしいっちゃ。」

満足そうにカキ氷を砕いては食べるラムに、あたるがすり寄る。

「俺にもくれ。」
「だめだっちゃ。」
「なんでだよ。」
「これはうちの分だっちゃ。ダーリンは昨日、自分の分を食べたっちゃ。」
「いいじゃないか、ちょっとくらい。分けろ。」
「いやだっちゃ。」
「けちだ! ラムはけちだ!!」
「何言ってるっちゃ。昨日うちが同じこと言ったのに、ダーリン一口もアイスをくれなかったくせに。」
「ぐっ……。」

それ以上、あたるは言い返すことができず。
ラムはシャキシャキと涼しげな音をたてながら、カキ氷アイスを食べ続ける。

「……ダーリン、汗いっぱいかいて、暑そうだっちゃね。」
「おう、ものすごおく、暑いわい。」

嫌味ったらしく言うあたるに、ラムはにっこり笑顔。
はて?とあたるが思った瞬間。

「ーーんっ…!?」

ラムの顔があたるの視界いっぱいにうつる。
急に口を塞がれた。
唇が、冷たくて気持ちいい…。

このままもっと…。
と、思ったところでラムの唇がすっと離れた。
唇の気持ちよさに意識を奪われていたあたるは、離れてしまったラムの唇を追いそうになる。

「少しは涼しくなったけ?」

にっこりと微笑むラム。

「〜〜〜別にっ! むしろ余計暑くなったわい!! くっつくな!」

顔を赤くして怒るあたるに、

「あ、ホント。ダーリン、顔が赤くなってる。まだ暑いのけ? もう一口アイスあげようか?」

ますます嬉しそうなラム。



8月の昼下がり。
蒸し風呂のような部屋の中で、
きゃあきゃあ、ぎゃあぎゃあ騒ぐ2人の後ろで、

「…こっちが熱うて敵わんわ〜……。」

と、寝たふりをしたままのテンが呟く。
しかしそれは、開け放した窓の外からひっきりなしに聞こえてくるセミの鳴き声と、
あたるとラムの騒ぐ声にかき消されてしまった。

ようやく静かになった頃には、カキ氷アイスはイチゴシロップになってしまっていたとか。



(終)


ずっと前に書いたお話。
人様に差し上げたのだと思うのだけど、せっかくだから自分のサイトにも載せようかな、と思い立ちました。