ガールントしにデパートに飛び込んだダーリンを追って、 さっきから店内を飛び回っているけど… 「一体どこに行ったっちゃーーーーっ!!」 向こうのゲーセンにはいなかったし、 レストラン街のテーブルは隈なく探したけど見当たらなかった。 東館のファッション街の綺麗な店員さんにも聞いてみたけど、 ダーリンらしき人物は来なかったって言ってた。 2階の喫茶店、本屋、果ては下着売り場まで、 ダーリンが女の子を追っかけてそうな売り場や、 美人の店員さんがいるお店(この間没収した手帳にリストアップされてたっちゃ)、 ずぇーーんぶ探したのに見つからない。 「もしかしてもうこのデパートから出て行ったのかなぁ。」 もう、たまにはうちと放課後デートしてくれたって、罰は当たらないっちゃよ。 「あーあ…。」 1人で当てもなくぽてぽてと歩く。 つまんない。 こんなトコ、1人で見てたって…。 ふと辺りを見回すと、ジュエリーのコーナーに来ていた。 ネックレスやらピアスやら、そして憧れのリングまで、目移りするものばかり。 眩いばかりの輝き。 「地球産の石もなかなかキレイだっちゃね〜v」 真っ先に目に留まったのは「エンゲージ・リング」。 「ダイヤモンド…透明できれいだっちゃ。ふふふv」 ショーケースに顔を近づけてリングを見ていると、勝手に頬が緩んでしまう。 真っ白のホワイトチャペル、真っ白のウェディングドレス、真っ赤なじゅうたんのバージンロード。 ステンドグラスから差し込むきらきらとした光を浴びて、そっと顔を上げると、 その視線先には 「ダーリン…v」 「何だよ?」 「っちゃああっ???!!」 「うわっ、何もそんなにそんな大げさに驚くことなかろーが!?」 「ダーリンが急に現れるからだっちゃ。」 「人をバケモノみたいに言うな!」 「だってずーっと探してたのに、全然見つからないんだもん。」 あんなに見つからなかったのに、探してないと現れるなんて、何だかヘンなの。 「ねぇ、ダーリン。」 「何だよ。」 「指輪、欲しいっちゃ。」 「はぁ?!」 「そう言えば、うちはダーリンにタイガースターのペアリングをあげたのに、 ダーリンは何にもプレゼントしてくれてないっちゃ。」 「あれはお前が無理やりよこしたんじゃ、あほ。」 「しっつれいだっちゃねー!あの指輪、ちゃんと持ってるのけ?」 「知らん。忘れた。」 そう言って横を向くダーリン。 ふーんだ、うち、ちゃんと見つけたんだから。 この間ダーリンの机の中をお掃除してたら、一番下の引出しの奥の方から、 何重にも重ねたティッシュペーパーに包まれたタイガースター。 箱は無くしちゃったらしいけど、でもちゃんと大切にしまっておいてくれてたんだっちゃね。 「ちょっと言ってみただけだっちゃ。 指輪なんて高いもの、買ってもらうつもりはないっちゃ。」 「当たり前じゃ。」 あんなン十万もする物をダーリンに買ってもらおうなんて、天地がひっくり返っても無理だっちゃ。 ま、何年か後に… 「…お前、さっきから1人でへらへらしてて気味悪いぞ。」 「っちゃ?!」 うそっ?! 顔に出てた?! 「あ、あははははは…。」 「……。」 焦ってダーリンから顔を逸らす。 すると目に飛び込んできたのは、 「“このケースの中の商品全品五千円”!!」 わ、安い☆ミ 思わず声に出してポップを読んじゃった! さすがにダイヤモンドリングはないけど、あーでも結構これでもいいかも…。 「ごせんえん、かぁ。」 「俺はビタ一文出さんからな。」 「わ、分かってるっちゃ。」 ン十万も五千円も、別に期待してないっちゃ。 別に買ってもらおうなんて…。 「あ、そうだっちゃ!」 「ん?!」 うちはダーリンと違ってお小遣いを使い果たしたりしてないから 自分の財布を見てみる。 千円札が2枚と小銭、そしてそして五千円札が1枚。 うちは五千円札と千円札1枚を財布から取り出す。 そして、 「はい、ダーリン。」 「ん?!」 ダーリンに渡した。 別にダーリンにお金を出してもらわなくても、要は気分が味わえるなら、いいっちゃ♪ 「何だよ。くれるのか?!」 早速自分の懐にしまいこもうとするダーリンを慌てて止める。 「違うっちゃ、もう! ね、ね、ダーリン、うちのお金でいいから、この五千円のやつ、どれか1個買って!」 「はぁ?!」 「うちの代わりにそのお金をレジで払ってくれれば、 ダーリンにプレゼントしてもらった気分を味わえるっちゃ♪」 「な…っ?!」 「別におごってっていうんじゃないんだから、いいっちゃ。」 ナイスアイデア★ これくらいのことならしてくれるっちゃ? ただレジでうちの代わりにお金を渡すだけのこと。 「…あのなぁ…。」 浮かれていたうちの耳に入ってきたのは、予想外に低いトーンの声。 あれ? ダーリン…? 「ダーリン…怒ってる…っちゃ…?」 さっきまでとうってかわって不機嫌そうなダーリンの表情に、 浮かれ気分は吹っ飛んでしまった。 「返す。」 ダーリンが六千円をうちの手に押し付けるので、慌てて受け取った。 それからダーリンはうちに背を向けてすたすたと歩き出してしまう。 「ダ、ダーリン、待ってっちゃ!」 そんなに怒ることだっちゃ?! 別におごってっていうんじゃないのに。 ただそれだけのことも面倒だとか言うっちゃ? 慌てて、だけどちょっと離れて、ダーリンの跡をついて行く。 ダーリンは黙ったまま、同じ速度で歩いていく。 どこに行くつもりだっちゃ? しばらくしてダーリンが足を止めたのは、雑貨屋さんだった。 女の子向けのバッグとか帽子とか小物とか腕時計とか、いろんなものが所狭しと並んでいる。 ダーリンはその店のひとつの棚を上から下まで一通り眺めると、 その中の売り物を1つ、手にとってレジに向かう。 すぐにお店から出てきたダーリンが、 「ほれ。」 と、適当な小袋に入れられただけのそれを、うちに放り投げてよこした。 「っちゃ?!」 落としそうになりながらも一応キャッチ。 「ダーリン、これ…。」 「525円。」 「え?」 「俺様におごってもらえるだけでもありがたいと思え。」 「おごって…って、え?」 ダーリンは何も言わずにまた違う方向に歩き出してしまう。 追いかけようとしたけど、その前に 「…わ…ぁ」 小袋を開けると、それは小さな石のイヤリング。 光が当たっても全然反射しない、明らかな作り物の。 ただのガラス球だというのが宇宙人のうちにも分かった。 イヤリングのタグに\500のシールもついたまま。 キレイな包装紙やリボンもなし。 ましてやとろけるような甘い言葉ひとつない。 それでも。 うちはダーリンからのプレゼントをぎゅっと握り締めて、超スピードでダーリンを追った。 数百メートル行ったところでダーリンを発見! 「ダーーリーン!」 ありがとv だっちゃvv (終) ん〜甘いデスネvv 戻る |