今日は高2のクラスの同窓会だった。

友引高校を卒業してからも頻繁に会う人たちもいれば、
全く会わなくなっていた人たちもいて、
会は大いに盛り上がった。

ダーリンは特におおはしゃぎで、
メガネさんや終太郎と張り合ってビールを何杯も一気飲みして、
その後も日本酒やら焼酎やらをガブ飲みした。
悪酔いするからやめた方がいいって、うちは何度も言ったのに。
会がお開きになる頃には、ダーリンは立っているのがやっとの状態。
それでも元学級委員として会を締めて、みんなと別れた。

「も〜ダーリン、ちゃんと歩いてっ。」
「あー…??」
ベロンベロンに酔っ払って足元がおぼつかないダーリンを無理やり引っ張って駅へ向かおうとしている、
けど     
「あーっダーリン、そこ、あぶな…っもぉぉーーっ!」
「ってぇ〜…んだよっこれ!」
ふらついた拍子に電柱にぶつかり、派手にすっ転んだ。
もぉ情けないっちゃーー(泣)。
うちはため息をつきながら再びダーリンの腕を引っ張った。
「ほら、ダーリン、お願いだからちゃんと歩いてほしいっちゃ。」

ここは繁華街の中央通りで、真夜中でも人がいっぱい。
通り過ぎる人たちが気の毒そうにうちらをちらちらと見て行く。
は、恥かしいっちゃ…(泣)。
何とかダーリンを引っ張り上げて立たせると、そのままダーリンの腕を自分の肩にかけて、
大荷物でも担ぐかのような体勢で再び駅を目指そうとした。
とにかく早くこの場から逃げたいという一心だった。

その時。
「…ラムー…。」
肩の向こうからダーリンの呼ぶ声がした。
「何、ダーリン?」
額から汗をこぼしながら振り向いた。
「ラム…俺………、」
「え…?」
振り向くと、そのままダーリンの両腕がうちの背中に回され、
うちはダーリンに抱きしめられる格好になった。
更にダーリンはうちの右肩に顔を埋めて身体を密着させる。
「ダ、ダーリン、いきなりこんな…っ」
「ラム…俺…もう我慢できん…。」
が、我慢?!
そんな、こんな繁華街のど真ん中でいきなりそんなこと言われてもっっ/////
「ダ、ダーリン、落ち着くっちゃ!みんな見てるっちゃ!」

さきまでの気の毒な視線とはうって変った、驚きと卑猥の視線を浴びて、
うちの頭の中はもう恥かしいなんて通り越していた。
心臓がバクバクいってる。
以前のうちなら喜んで抱き返しただろうけど、地球に住んで数年が経ち、
さすがにそんな行動はとらなくなっていた。

「ラム…。」
耳元でうちの名を呼ぶその声に、身体が反応する。
「ダーリン…。」
無意識のうちにダーリンの背に自分の腕を回して答えた。
そして次のダーリンの言葉を待つ。



「俺、もう…、」

もう…何?

「吐きそう…。」



ダーリンのその言葉を聞いた瞬間、酔いしれていたうちの頭は一気に覚めた。
「ダーリン、ちょっと、やだっ!このままで吐くんじゃないっちゃっっっ!!」
「でも、もう我慢できねー…。」
ますますうちに体重を預けてくる。
お、重いっちゃあぁぁぁぁっ!

何とかしなくちゃ!
いくら愛するダーリンのでも、ゲ●まみれになんかなりたくない。
冗談じゃないっちゃ!
何か、何か     
「あっ、あそこ、あそこに入るっちゃ、ダーリン!」
周囲を必死に見回して発見したのは、横道に入ってすぐの辺りに光る看板、
「ご休憩」の3文字。
うちはダーリンの身体を自分の身体からひっぺがした。
「ほら、ダーリン、あそこに入って休憩しよっ!
お手洗いを借りてそこで思う存分吐けばいいっちゃ!」
うちはまたもやダーリンを引きずって、光る看板目指して一直線に突き進んだ。

信号を渡って横道に入り、その建物の前に立って、
うちはそれが何であるのかやっと気づいた。
「ラ、ラブホテル…(汗)。」
ちょっと冷静に考えれば分かるのに、「ご休憩」の意味くらい。
「どーしよう…。」
うちの肩に担がれたダーリンの顔を見る。
ダーリンは青い顔をして辛そうに呼吸するばかり。
…本当に今にも吐きそう…(泣)。
「もうっっっ、こーなったらどこでもいいっちゃ!」
うちは意を決して足を進め、適当に部屋を選んでダーリンを連れ込んだ。

ドアを開けるとそこはまるで別世界。
ピンクの布とピンクのライトに目がチカチカする。
見慣れない大きなまあるいベッドに一瞬足がすくんだが、そんなことを気にしている余裕はない。
「ダーリン、もうちょっと我慢するっちゃよ!」
「うー……。」
ダーリンは手で口を抑え、何とか堪えている。
「トイレ、トイレはどこだっちゃ?…あったーーっ!」
金色の重そうなドアを勢いよく開け、
危険な唸り声を発するダーリンを力任せにトイレの便器に向かって投げつけた。
そして慌ててドアを閉める。
「ふぅ〜。」
ドアに背中でもたれかかり、緊張が解けたうちはそのままずるずると床に座りこんだ。
ドアの向こうからはイヤな感じの音や声。
あーーーもーーーーぅぅぅっ(大泣)。

少しして音も声もしなくなった。
「ダーリン??もう大丈夫??」
ドアをコンコンとノックして様子をうかがう。
「ダーリン、開けるっちゃよ?」
本当は開けたくなかったが放っておくこともできないので、仕方なくドアを開けた。
するとダーリンは、洋式トイレの便器に顔を突っ込んだ状態。
ぴくりとも動かない。
「ダ、ダーリン、しっかりするっちゃ!!」
鼻をつまみながらダーリンの身体を揺する。
「うー…ん…。」
「ダーリン、気がついたっちゃ?大丈夫け?!」
ダーリンがうっすらと目を開けた。
うちはほっとして、ダーリンの頭を自分の膝の上に載せる。
「ラム…。」
「もう気持ち悪くないっちゃ?」
ダーリンの頭をそっと撫でながら問い掛けた。
「ん…大分すっきりした…かな…。」
そう言った後、ダーリンがゆっくり身体を起こした。
「家に着いたのか…??」
「ううん、違うっちゃ。あ、ダーリン、あっちで横になるといいっちゃ。」
ダーリンの背中を少し押すと、ダーリンはよろめきながらも自力で立ち上がる。
壁づたいに歩くダーリンを軽く支えて、柔らかそうなベッドへと向かう。
ベッドにたどり着くと、ダーリンはどさっと重い身体を投げ出した。

「あ〜気持ち悪かった〜…。」
ころんと仰向けになって、目を閉じるダーリン。
「もうどうなることかと思ったっちゃよ。」
ダーリンの側にうちも腰を下ろした。
「少し休んだら家に帰ろ、ダーリン。」
再びダーリンの頭をそっと撫でた。
「あぁ。」
返事をして、ダーリンがまた目を開けた。
「ところでここはどこだ?さきからやけに眩しいんだが…。」
ダーリンは仰向けになったまま、ゆっくりと顔を横に向けて現在の状況を把握しようとする。
「あーあーあーーっ!ダ、ダーリンは何も気にしなくていいっちゃ!
ほら、しっかり休憩するっちゃ!時間がなくなってしまうっちゃ!」
ここがどこか知られたくなくて、うちは慌ててダーリンの顔面を枕で覆い隠した。
「ぶほっ、げほっ!やめんかいっ!」
大分意識がはっきりしてきたらしく、ダーリンが枕を払いのける。
「いきなり何の真似だ!ったく、時間がなんだって      、」
起き上がってどなりつけようとしたダーリンは、一気に目に飛び込んできた光景に言葉が繋がらない。
「ここ…って…。」
「あ、えーーっと…ダーリン…?」
ベッドの上で上半身を起こしたまま、ダーリンが辺りをぐるりと見回した。
「おい、ここ…まさか…。」
「だ、だってダーリンがっ、ダーリンが吐きそうってゆーから、し、仕方なく入ったっちゃっ!
別にそんなつもりで入ったんじゃないっちゃ!誤解だっちゃーーっ!」
鏡を見なくても自分の顔が真っ赤に染まっているのが分かる。
きっと“ゆでだこ”だ。
ダーリンにヘンに思われるのが嫌で、うちは全身で思いっきり「否定」をした。
それなのにダーリンはジト目でうちを見る。
「ふ〜ん…仕方なく、ねぇ…。」
「何だっちゃ、その目はーーっ!ダ、ダーリンはうちがわざとこんな所に入ったと…」
両手をぶんぶんと振って否定を繰り返す。
そしてダーリンが、
「…ふははははは!すげー顔!」
急に腹を抱えて笑い出した。
「ダ、ダーリン…/////」
振り回していた両腕をのろのろと布団の上に下ろした。
「後、何分だよ?」
「え?!」
「だから、時間。後どれくらい“休憩”できるんだ?」
「あ、えと…多分まだ30分くらいしか経ってないっちゃ。」
「ふーん、んじゃ少し寝るわ。時間が来たら起こせよ。」
「わ、分かったっちゃ。」
ダーリンはまた柔らかい布団の上に横たわった。

からかわれたのだとようやく気づいて、うちは拍子抜けして大きく息を吐いた。
「もう、今夜は散々だったっちゃ…。」
1人呟いた。
すると、
「ラム。」
ダーリンの声。
「何、ダーリン?」
振り向きもせず聞くと、
「サンキュー。」
というあまぁい声と、優しくうちの手を握るダーリンの手の感触。
「ダーリン…。」
つい嬉しくて振り向くと、聞こえるのはもう安らかな寝息だけ。
それでも手はそっと握ったまま。
「散々…でもないっちゃv」

気持ちよさそうに眠るダーリンの寝顔を眺めながら、
ベッドの横に備え付けられている目覚ましコールのスイッチを入れて、
うちもダーリンの隣に横になった。


目を閉じても瞼の奥に差し込んでくる淡いピンク色のライトが、何だか幸せに思えた夜。




(終)


ももろんさんのHP「At him!」30000ヒットのお祝いに書いたお話。
ももろんさんの描かれた素敵だーりんvラムちイラストから妄想して作りました。
とってもラブなうっとり絵なのです〜…/////



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