「よく食べるっちゃね〜…。」
「勉学に励むと腹が減るんじゃ。」
「寝てただけだっちゃ。」
「うるへー。」

まだ1時間目の放課だというのに、がつがつと早弁を取っているダーリンを
呆れながら横目で見るうち。
「やだっ!ダーリン、ご飯粒がこっちに飛んできたっちゃ!」
「それは勿体無い!」
うちの机の上に付いたご飯粒を摘み取ってひょいぱくと口の中へ放り込んだ。
…卑しいっちゃー…。
でもガールハントされるよりはいいっちゃね。
妙な理屈で自分を納得させた。
強引に☆

そのままぼんやりとダーリンを眺めていたら、
「あ…」
という小声と共に、箸を動かすダーリンの手がほんの数秒止まった。
目線は前方。
ホントにたった1、2秒のことで、ダーリンはまたがつがつと食べ出した。
「…?」
ダーリン、何を見たのかなぁ??
さっきダーリンの目線が留まったであろう辺りをうちも見てみる。
でも視界に入るのは古びた黒板と、そこに落書きしているカクガリさんとチビさんだけ。
別にしのぶや竜之介、その他女の子がいたわけじゃない。
何だったっちゃ?

「ラム。」
ふいに右横から呼ばれた。ダーリンの声。
「何、ダーリン?」
声のする方を向くと、うちの方に赤い物が差し出された。
「ウイ…ンナー…??」
ダーリンのお弁当にいつも入っているもので、タコの形に切ってある。
ダーリンがちっちゃい頃から好きだからってお母様が言ってたっけ。
…で??
「ダーリン、これ、何…」
「やる。」
うちが聞こうとするのを遮って言って、ダーリンが更にうちにウインナーを近づけた。
「ダーリン、うちお腹空いてないっちゃよ。」
苦笑いして断わっているのに、
「いいから、やる。」
その一点張り。
「でも、うちホントにお腹はー…」
ダーリンの意図が分からなくて困ったうちの目に飛び込んできた文字。
前方の黒板の右隅に白いチョークで。

『3月14日(金)』

…ホワイトデー…?!

慌ててダーリンを見る。
赤いタコさんウインナーはうちに向けて差し出されたままで、
ダーリンは明後日の方を向いている。
その頬が心なしかほんのり赤い。

「ダーリン…ありがとだっちゃvv」
勝手に顔がほころんでしまう。
嬉しくて。
嬉しくて。

にっこり笑ってウインナーを指でつまんで受け取ると、
ひょいぱくと自分の口に放り込んだ。
ダーリンは、
「別にー…。」
と気のない返事をすると、またがつがつとお弁当を食べ始めた。

2時間目の始まりのチャイムが鳴る頃、
赤いタコさんウインナーはうちのお腹と胸を幸せで一杯にしてくれたのデシタv


(終)

同人誌「ラムコム」に投稿した自分の漫画を短文にしましたー♪


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